下水道の財源(建設改良費と管理運営費
はじめに   公共下水道の会計  負担区分  費用構造   建設改良費   管理運営費
1,財源構成  2,雨水公費・汚水私費の原則  3,資本費  4,下水道使用料 
6-4下水道使用料
 汚水私費の原則により、汚水に係る経費(資本費+維持管理費)は上述の公費負担分を除き私費で負担することになります。私費負担分については、下水道法第20条に基づいて、市町村(公共下水道管理者)が条例で定めて「使用料」として市民から徴収することになります。

 法では、使用料を定めるにあたって、次のような原則が規定されています。

 一 下水の量及び水質その他使用者の使用の態様に応じて妥当なものであること。
 二 能率的な管理の下における適正な原価をこえないものであること。
 三 定率又は定額をもつて明確に定められていること。
 四 特定の使用者に対し不当な差別的取扱をするものでないこと。

 また、先に述べた「下水道財政研究委員会」において、下水道使用料制度に関する基本的な考え方についても提言しています。
最終の第5次提言(昭和60(1985)年)では、「一般排水(一般家庭汚水及び工場、事業所等からの排水のうち、特定排水以外の部分)についての使用料対象費用としては、汚水に係る維持管理費(下水道施設の運転管理等に直接要する費用をいう)のうち、公費で負担すべき部分を除いた全額を対象とすべき。また、汚水に係る資本費(国庫補助金及び受益者負担金徴収分に係るものを除くことを原則とする)については、公費で負担する費用を除き、その対象とすることが妥当であるが、その場合いおいても使用料が著しく高額となる等の事情がある場合には、過渡的に、使用料の対象とする資本費の範囲を限定することが妥当である。」と使用料で負担すべき範囲を示しています。また、「使用者間の負担の公平を図るとともに、一定の基準を超える水質の排水抑制を図るため、執行体制、徴収費用等を勘案しつつ、終末処理場の処理能力に応じ、必要な場合には、水量による使用料に上乗せして水質使用料を徴収すべきである。」とし、「大量排水については資本費の増大要因になる側面も考慮し、汚水処理費用の要因に対応した適正な累進度の下に、市町村の実情に応じた累進使用料体系を採用すべきである。」として「水質使用料」と「累進使用料体系」を提言しています。

 国土交通省(旧建設省)においては、法第20条第1項の規定に基づく使用料の徴収に係る使用料の制定又は改定のための参考として、総務省(旧自治省)と協議の上「下水道使用料の基本的考え方」(昭和62(1987)年)を発出しています。それに基づく具体的な使用料の算定方法として(社)日本下水道協会から「下水道使用料算定の基本的考え方」が発刊、その後、平成20(2008)年に改訂版を経て、平成29(2017)年に(公社)日本下水道協会から「下水道使用料算定の考え方(2016年版)」が発刊されています。最新の2016年版では、下水道使用料に関して、今後人口減少に伴う使用料収入の減少が見込まれる一方で、資産の適切な維持のための財源確保が必要となること等を踏まえ、使用料対象経費の算定の中に「資産維持費」を位置づけるとともに「コンセッション方式における公共施設等運営権者が収受する下水道利用料金の取扱い」を明記されました。

 資産維持費とは:将来の更新需要が新設当時と比較し、施工環境の悪化、高機能化(耐震化等)により増大することが見込まれる場合、使用者負担の期間的公平等を確保する観点から、実態資本を維持し、サービスを継続していくために必要な費用(増大分に係るもの)として、適正かつ中長期の改築(更新)計画に基づいて算定するもの

条例を制定する市町村(公共下水道管理者)では、上記の提言、国の通知などを参考にして、公共下水道事業の着手時期が異なることなどそれぞれの地域の実情に応じて、使用料体系を構築しています。
使用料体系としては、次のような一部使用料または二部使用料制があります。



 * 定額使用料制:1世帯当たり又は1人当たりの下水道使用に伴う単価を設定し、その数に応じて下水道使用料を聴取する制度
 ** 水道料金比例制:水道料金の一定割合を下水道使用料として徴収する制度

 これに、累進使用料制、水質使用料制、用途別使用料を組み合わせる構成もあります。

・累進使用料制:大口需要家の需要変動リスクに対応するコストを調整・配賦するという趣旨から、使用料の増加に応じて使用料単価が高くなる使用料体系

・水質使用料制:排水の水質濃度に応じて、使用料対象経費の一部を一定の基準を超える濃度の排水を排出する使用者に賦課するもので、従量使用料に上乗せして徴収するもの

・用途別使用料制:使用者の使用目的等により使用料を区分する方法で、その区分に応じて同じ汚水排出量であっても、使用料が異なる制度(例 公衆浴場用、公設プール用、工業用等)
全国の各都市の使用料制度の概要(5年間)は下表のとおりです。


 令和3年度では、下水道使用料を徴収している全都市のうち、約95%が下水道独自の従量使用料制を採用し、更に、従量使用料制の採用都市のうち、約97%が基本料金を徴収しています。また、累進使用料制は、全体の約73%が採用していますが、水質使用料制は約5%にすぎません。
 今後、将来人口減少等に伴う有収水量の減少に備えるためには、利用の実態などを踏まえて、「基本料金+従量使用料」からなる二部使用料制を検討し、基本料金の割合を徐々に高めていく必要があります。

 次に、一般排水に係る使用料対象経費別の都市の状況(過去5年間)は次表のとおりです。


 公共下水道の汚水分の維持管理費に加えて資本費の全部または一部を使用料対象経費として参入している都市が655都市であり、全体都市の46%となっています。
  具体な下水道使用料の程度について、一般家庭排水20㎥/月使用時の使用料の全国の単純平均を次表に示します。料金改定によって毎年少しずつ上昇し、令和3年度では全国平均で2,938円となっています。


 最後に、汚水処理経費を下水道使用料でどれだけ賄えているかを示す経費回収率の経年変化を示します。(経費回収率(%)=使用料単価(円/㎥)÷汚水処理原価(円/㎥))

<経費回収率等の推移>


 全国ベースでは、経費回収率は近年改善が図られてきていますが、約75%の下水道事業で汚水処理原価が使用料単価を上回るいわゆる「原価割れ」状態で、人口が少ない都市ほど厳しい状況がみられます。

 公営企業は、適正な経費負担区分を前提とした「独立採算の原則」が定められており、今後も下水道経営の健全性の向上を図っていく必要があります。そのためには、経営効率化の不断努力と使用料をご負担いただく市民のご理解を得ることが不可欠です。

<参考資料>
・国土交通省水管理・国土保全局(上下水道)のHPで公表されている資料
・日本下水道協会「日本下水道史」(平成元年)、「続日本下水道史」(平成28年)
・日本水道新聞社「下水道事業の手引」(令和2~6年度版)