下水道の財源(建設費と使用料) 試行版2006.7.05
                          Ta.Nin

                                          
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4.下水道の建設費の財源

 表−1に示した建設費の財源のうち、公費である国庫補助金、一般市町村費、地方債について、国の平成18年度予算で整理すると、表−3のとおりです。
事業予算の総額は、国全体で、約2兆1千億円に達しています。
表−3 平成18年度・下水道事業関係予算      (単位:億円)
    財源内訳 国庫 補助金 市町村費 地方債 合計 備考
18年度予算額 約7,400 約2,700 約11,000 約21,000 市町村費の中には、都市計画税、受益者負担金を含む。
※ 表−3の数字は、
・「平成18年度下水道事業関係予算」(国土交通省下水道部)
・「平成18年度下水道事業関係地方債」(総務省自治財政局)
から、算定したものです。
※ 公費である都市計画税、私費である受益者負担金の額は、数字の確定が次年度となるため、予算上は、一般市町村費の内数になると考えられます。

以下、国庫補助金など建設費の各財源について説明いたします。

(1)国庫補助金

下水道事業は、本来的には、受益の範囲が特定される地元市町村などが行うものです。しかし、下水道は、公衆衛生の向上や川や海(公共用水域)の水質保全に大きく貢献する施設であり、環境の保全を図り安全で文化的な国民生活に送る上で欠かすことのできない基幹的な施設です。

そこで国が、建設を進める市町村に対し国庫補助金‐‐建設国債による補助金‐‐を交付し、遅れている下水道整備の促進を図ろうとするものです。
公共下水道、流域下水道((注)−2)に大別し、補助の対象となる施設への補助率を示すと表−4のとおりとなります。
表−4 主な国庫補助率(平成17年度

下水道の種類

施設名

負担区分

摘要

国(補助率)

県又は市町村

公共下水道

 管路等

 1/2

 1/2

(5)参照

処理場

主に5.5/10

主に4.5/10

流域下水道

 管路等

 1/2

 1/2

処理場

 2/3

 1/3


(注)−2 流域下水道とは、複数の市町村にまたがる区域において、市町村に代わり県が、管路、ポンプ場、処理場など根幹的施設の建設・管理を行うものです。

平成18年度予算の国庫補助金は、表−3のとおり約7,400億円となっています。
しかし、国庫補助金は、財政事情の悪化により平成10年をピークとして減少の一途を辿っており、ここ数年はピーク時の半分以下に落ち込んでいるのが現状です。
良好な環境の形成や国民1人1人の安全な暮らしを実現する下水道の多様な役割を考慮すると、一層の下水道整備の促進を図るためには、必要な国庫補助金を確保することが何よりも重要となっています。
 
(2)一般市町村費
 住民税や固定資産税など、その市町村が独自に徴収することのできる税収をいいます。ここでは、国の税収の一部が国から市町村に交付され、下水道建設などの費用にも使える地方交付税も含めて一般市町村費と言うことにします。
 平成18年度においては、表−3のとおり約2,700億円に達するものと試算されます。

(3)地方債

地方債とは、市町村などの地方公共団体が財政上必要な資金を外部から調
達する(借り入れる)ことによって生じる債務のことをいいます。
地方公共団体が発行した地方債の債務の支払いは、長期に渡って行う(例え
ば10年とか20年で返済していく)ため、下水道のように建設時に集中する財政負担を施設を利用する後の世代にも負担して貰う形となり、負担の平準化と世代間の公平を確保出来ることとなります。

このため、下水道事業を促進するため地方債の発行が認められており、平成18年度の下水道関係の発行額は、表−3に見るとおり、約1兆1,000億円に達するものと見込まれています。

(4)受益者負担金

 受益者負担金は、都市計画法の規定に基づき、特定の公共事業により著しい利益を受ける者に対して、利益を受ける限度において、事業費の一部を負担して貰おうとするものです。
 公共下水道の場合、
@ 下水道整備による利益を受ける者の範囲が明確であること
A 下水道整備により特定地域の環境が改善されて利便性・快適性が著しく向上し、結果として当該地域の土地の資産価値を増加させること
B 早期に受益する者に相応の負担を求めることは負担の公平という観点から適当であること
等の理由から、多くの市町村で受益者負担金制度が採用され下水道整備の促進に大きな役割を果たしてきました。

全国の受益者負担金の徴収実績ですが、平成15年度においては、徴収都市の数1,217、徴収額約840億円、徴収都市の事業費に対する割合は、平均で5.7%となっています。
(5)都市計画税
都市計画税は、下水道事業などの都市計画事業に要する経費に充てるため、市町村が目的税として課税する税です。各市町村は条例により市街化区域に存する土地および建物に対して賦課徴収を行います。

税率は、制限税率0.3%の範囲内で市町村が定めています。
平成16年度において、公共下水道事業を実施している全国1495都市のうち、都市計画税を下水道整備に充当している市町村は177都市となっており。その総額は、約230億円を数えています。
(H16「下水道統計」財政編より)

以上(1)から(5)の建設費に係る主な財源について、公共下水道の管路と終末処理場に当てはめ、模式的に整理すると図−1、2のとおりとなります。
    図−1 管路等の建設費                       図−2 処理場の建設費
補助対象費@ 単独費 A
国庫補助金
(1/2)
地方債
(9.5/10)
地方債
(4.5/10)
市費など(0.5/10) 市費など0.5/10)
補助対象費@ 単独費A
国庫 補助金
(5.5/10)
地方債
(4.05/10)
国庫補助金
(1/2)
地方債
(4.5/10)
地方債
(9.5/10)
市費など(0.45/10) 市費など(0.5/10)
(0.5/10
市費などとは 一般市町村費、都市計画税、受益者負担金など
@:表の補助対象費とは、下水道施設のうち、国庫補助金の交付対象となる施設の建設費を言います。
A:単独費とは、国庫補助金の交付対象にならない施設の建設費を言います。
(例えば、処理場の門や塀等は補助対象とならず地方のお金だけで整備することとなります。)  
図の( )内の数字は、補助対象費、単独費おのおの額の中に占める割合を示しています。
図の中のの部分は、補助対象費の内の国庫補助金の占める割合を示します。
処理場では施設によって国庫補助の割合が異なり、5.5/10と5/10のものがあります。
  
(6)建設費のまとめ
以上(1)〜(5)まで、下水道事業の建設費の財源について触れてきましたが、改めて、表−3も参照しながら纏めて見ます。
  
平成18年度における国全体の予算は、総事業費は約2兆1千億円余り。
事業費の財源は、以下の公的な費用−いわゆる公費−の3本柱で構成されています。
@国庫補助金 :7,400億円余り(構成比約35%)
A一般市町村費:2,700億円余り(構成比約13%)
B地 方 債 :1兆1,000億円弱(構成比約52%)

一方私的な費用−いわゆる私費−である受益者負担金を投入する市町村も見られ、その総額は、平成16年度で約610億円を数えています。
これは、時点は異なりますが、上記Aの平成18年度ベースの一般市町村費に占める割合としても、20%強を占めるに至っており、限られた一般市町村費の中の貴重な財源となっています。

国全体で見た場合、現段階では下水道整備がまだまだ不十分な状況であるため、下水道建設には、国・県・市町村が総力を挙げ、大部分、公費を投入して整備促進に邁進している状況にあるということになります。

(注)これまで(1)から(5)で下水道事業の建設費の財源について説明してきましたが、文章・図表などの記述内容は、基本的には、以下の資料を引用または参考にしたものです。

○H17年版「下水道事業の手引き」(国土交通省都市地域整備局下水道部)
○H17年版「日本の下水道」(同上)