水環境ひろば③ 雨と上手につきあう
 7月30日(木)15:10~16:40
コーディネーター  NPO法人 雨水市民の会 理事長 山本 耕平 氏
講 演  「雨とつきあう」
 東京大学 名誉教授 高橋  裕 氏
 
事例発表 「『世田谷ダム』から『野川ダム』へ─皆で取り組むグリーンインフラストラクチャー─」
   野川流域連絡会 座長 神谷  博 氏
「雨と上手につきあう下水道」
   NPO法人 21世紀水倶楽部 理事 山下  博 氏
「雨と上手につきあおう」
   NPO法人 雨水市民の会 理事 笹川 みちる 氏 
総合司会      NPO法人 21世紀水倶楽部 理事 押領司 重昭 氏
 開催報告
 講演会は21世紀水倶楽部理事の押領司重昭の司会で、東大名誉教授の高橋裕氏とコーディネーター山本耕平氏の紹介から始まった。
高橋裕氏からは雨に対する感覚は日本人特有のもので、欧米や東南アジアの国々の人たちには全くない。日本の文化は雨と米作であり、雨の言葉にしても五月雨や梅雨など辞典には40種類以上が有る。雨の表現としても、シトシトやジャブジャブなど多様であり、俳句や和歌のテーマになる。イスラム圏やフランスには傘はなく、レインコートで対応している。日本では天気予報が重要で毎日細かく報告しているが、雨の降らない国には天気予報はなく、雨宿りや相合傘などの単語もない。砂漠の国では年一度10~20㎜の集中豪雨があるが、あとは全く雨は降らない。
この30~40年で都市化が進み、日本人の水に対する感覚は変わってきた。長崎での187㎜の豪雨や伊勢湾台風での1,000人以上の死者が出る雨など非常に不規則な雨に危機を感じている。一方、雨を楽しむ会がある。水の流れが見える雨樋を作り雨を楽しむ。屋根の雨の半分は庭に、残りは地下タンクに貯蔵して洗濯やお風呂に使用する。塩素がないため飲めないが、安心な水なので、水を楽しみましょうとのお話があった。
 また野川流域連絡会座長の神谷博氏から、「野川流域連絡会」は東京都を事務局として野川流域のすべての自治体と市民団体および、市民の代表によって構成されており、情報や意見交換会・提案を行うことを目的として、平成12年8月より立ち上がった。水環境部会と生きもの部会に分かれており、他になっとく部会と研究部会がある。下水道の普及により湧水保全を行わないと野川に水がなくなる、などをテーマに、各家庭での雨水貯留や多自然川づくりなどを行っている。
続いて21世紀水倶楽部理事の山下博氏より大都市(東京都や横浜市)での豪雨対策を目的にした街づくり家づくりの話があった。最近1時間降水量50㎜以上の豪雨の発生が各地で200件以上起こっており、官民連携による浸水対策が必要である。流域対策に始まり、河川事業での雨水対策として日産スタジアムの近くに建設した大規模遊水池や、下水道事業として東京都の南元町雨水調整池(1万3,000㎥、プール43杯分)や横浜市の新羽末広幹線(直径8.5m 長さ約20㎞、41万㎥、プール1,370杯分)の実例の説明があった。
最後に雨水市民の会理事の笹川みちる氏より「雨は好きですか」から始まり、墨田区の雨水の活用、水の循環、洪水防水等に取り組む活動の報告があった。1981年の錦糸町の洪水の後、両国国技館に地上タンクを設け雨水を貯める。一方、各家庭には地下タンクを設け手押しポンプで雨水を利用するなどの墨田区の活動により、現在は500戸程度がタンクを作り雨水を利用している。
総合討論では山本耕平氏のコーディネートの下、講演者と事例説明者とを囲んで質疑応答を行った。とりわけ雨水貯留タンクの活用と下水道の普及による中小河川の渇水が話題となった。雨水貯留による蚊の対策には建築学会が基準を作り、対策に力を入れている。また墨田区では行政とは全く関係なく水利用を進めているが、蚊の発生は問題になっていない。イタリアでは雨水を洗濯水に利用している等のお話があった。
 
   
 高橋先生の講演
   
 事例発表