H18.12.14(木) 「下水道管路の建設・管理とITの活用」セミナー(会員限定) 

日時:平成18年12月14日(木) 15:00〜17:00
場所:日本水道会館 8階会議室
参加者:16名
主催:IT活動グループ

開催の趣旨

今回のセミナーは事前に会員の皆様からテーマを募集しました。その結果、下水道管路の維持管理や多目的活用に関するものが最も多いご提案でした。
そのため、下水道管路へのIT活用について会員間の議論を行い、それをヒントに今後の会員内外への情報提供を行うこととしました。
下水道管路は建設のピークが始ってから40年近く経過し、今後は老朽管路が急激に増加し続けることが予想され、既に管路の腐食や破壊による道路陥没や浸入水の問題が発生しています。
普及するインターネットや各種ID、センサーなどのデバイスを活用して、既設の管路や今後改築更新する管路の安全で効率的な維持管理について自由な議論を進めるため、基礎的な資料を配布しました。


議論や意見の概要

○地上波デジタル放送と下水道光ファイバー

地上波放送は大規模なタワーを建設せずに下水道管路を使った光ケーブル幹線通信が現実的で、それを下水道管理など多目的に使える利点もある。

⇒放送波をケーブル通信とするのであれば、幹線ルートには既設の道路や河川の公共光ケーブルの空部分を使うほうが合理的である。下水道管路は通信幹線よりもFTTHに適している。

⇒難視聴地域への配信に活用する場合には、下水道管路活用では時間と予算に制限が大きい。
 

○下水道管路の適正な管理に必要なマンパワー

ITに頼ることで、必要な組織人員やスキルの継承が損なわれると適正な管理は期待できない。IT化に並行して能力を伴う人材の確保や養成も必要である。

⇒人材やスキル不足に対応できるようなIT設備を考えるべきで、今後の人材不足は防ぎきれない。
 

○更新時に同時施工するメリット

既設管路にセンサーや通信の装置を設置するのはコストが嵩むが、新設や更新に併せて施工するのは容易である。例えば、光ケーブル用の入線断面を持つ管路材料を採用して将来必要な時に入線し、目的に応じたセンサーを設置する。

⇒光ファイバーの整備を目的として、処理場に先行して短期間で管路を整備する下水道事業があってもよいのではないか?

⇒遠心力コンクリート管では複断面の製造は難しいのではないか?
 

○下水道光ファイバーが普及しない理由

下水道光ファイバーの整備は近年低調になってしまっているが、原因はどこにあるのか?

⇒下水道光が目指したFTTHは、民間通信事業を主とした他の手段で普及が進んでしまった。電力の地中化が進まず通信だけが地中化しても電柱が消えない。多目的活用を目指した既設下水道管内設置はコスト高であり、維持管理の面から通信、下水道の両事業者から歓迎されないなどが主な理由ではないか?

⇒国土交通省は現在でも重点施策に含めているが、自治体からの新規要望が続かない。
 

○管路が破壊すれば光センサーは役に立たない?

管路の損傷をセンシングして送信する機能は、管路自体が破損すれば役に立たなくなる。

⇒通常の地盤沈下や腐食によって発生する僅かな歪を検知する場合、光ファイバーは破損しないので、破損の予知が可能である。大地震のような大きな破壊の場合には、センシング用に固定したファイバーは破断する。(通信専用のケーブルは管路に固定せず、予備の延長を持たせるので殆ど破断しない。)

 

結  論:

管路へのIT活用について、会員間の疑問や情報、意見の交換が活発に行われた。具体的なアイデアは生まれなかったが、管路更新時に何らかの先行的な措置をしておく必要性では意見が一致した。今後はIT活動グループで情報収集を行い広報する。


      
参考資料:

1.下水道管路の動向・・・国土交通省資料(下水道施設の改築等)配布
   http://www.mlit.go.jp/crd/city/sewerage/data/02-07.pdf                              
2.データ通信の動向・・・別添
3.IDデバイスの動向・・・別添
4.光ファイバーセンシング・・・パンフレット配布
   http://www.nttinf.co.jp/service/fiber.html