「膜処理技術の動向」

     東京大学環境安全センター       山本和夫教授

・ 水処理技術に用いる膜技術

 膜分離技術の主用途は、水資源不足の解消という観点からのROを用いる海水淡水化と、健全な水循環を目指したMBR(メンブレンバイオリアクター)による排水の再利用に、大きく分けることができる。図−1に示した消費エネルギーは、オーダーを表しており、MBR0.5kWh/m3は当面の目標である。次世代のものの技術開発は1オーダー低いところを狙うこととなる。膜技術の原理は分離であり、分離排水が出ることになるが、MBRはこの分離排水を処理しているということで優れている面がある。

           

            図−1 膜分離技術の主用途

 

・ 膜処理技術としてのMBR

 米国で開発された第一世代の膜ろ過技術はビル内の中水道として用いられたが、第二世代の浸漬型は日本において先進的に開発実用化され、産業廃水処理等にまず適用された。現在、下水処理に適用される段階は第三世代と考えられる。

 MBRは膜分離の特性から、高い清澄度の処理水が得られ、まず高度処理の用件を満たしている。次にコンパクトであるのが特徴で、更新技術としても適用しやすいという利点がある。消費エネルギーの低減が課題であるが、リアクター内の汚泥濃度を低目に安定化させ余剰な曝気エネルギーを抑えることが必要である。また、リアクター内汚泥を利用可能なバイオマスと考えプロセスを改善していくことも必要である。生物処理のために必要となる曝気エネルギーだけで動くプロセスを目指すことが究極の目標になる。

 

       次世代MBR

     

     図−2 次世代MBRのイメージその2(既存都市下水処理場の更新型)

 

 下水の高度処理を、持続可能な社会の構築に寄与し、かつ安全・安心を担保する物質変換技術として捉え、@資源生産(循環型社会)、Aエネルギー自立(低炭素社会)、B自然共生(自然共生社会)、を追求すべきである。具体的には、嫌気性処理、バイオガス化を組み込んだオンサイト高度処理型MBR、また、既存都市処理場の更新型MBR(図−2)については、前段分離固形物のバイオガス化に限らず超臨界水ガス化による水素回収も組み入れたシステムをイメージすることができる。都市における持続可能な水システムを構成し、オンサイト水管理を支えるMBR技術を次世代MBRの基本としたい。