下水道でディスポーザー「DSP」を利用した場合の検討
 

正論広場への問い合わせ事項<HN:敏英様より.そのまま掲載>

南の方の地方県の地方小都市に住んでいるんですが、下水道でディスポーザーを使うにはいろいろたくさん問題があるようなんですが下水(汚水)の負荷は、確実に上がりますよね。それの下水処理施設での処理費用,管渠の維持管理または、修繕費用などはあがりますよね。でもバイオガスに変えられる汚泥はふえますよね。それから燃料電池を利用して電力に変えると下水道料金には、どう跳ね返ってきますか?また、もえるゴミは、減ると思うのですが、これからの21世紀、地方の小市民生活はどうなっていきますか。


敏英様  水倶楽部会員:齋藤 均(技術士:上下水道部門−下水道)
短いコメントの中に,質問事項が多いので,簡略に概要と私の見解を説明します.

1.処理施設の処理費用

地方小都市の場合,ディスポーザー(以下:DSP)で破砕された生ゴミ等が流入水への汚濁負荷として主に増加すると考えられる.基本的に活性汚泥法は水に溶存している生物分解性の汚濁を除去する.もちろん活性汚泥に小さな水中の浮遊性SSを補足して除去可能である.ただ,食用油などが大量に流入する場合は論外である.

野菜くずなどを破砕した,生ゴミ系汚濁汁.これらは易生物分解性と思われる. 処理施設は,最低でも15〜20年以上先の流入水量・水質を予測して建設されている. それが仮に処理施設の第1系列としても.したがって,現時点で,計画流入水量の全量が入っていない場合,施設のHRTを延ばすなどして(計画処理水量が流入していないので,HRTは必然的に長くなる),DSPによる破砕物の処理が生物化学的に反応槽で対応可能であると考える. 特に施設供用開始当初は流入水のBOD・SSが予想以上に低く,MLSSの維持が困難である.これらの事を踏まえて,総合的に判断する必要があるが,なに分,DSPを分流式下水道に取り入れて,国交省を中心とした実験を行ったのが2年ほど前なので,まだ,連続的にDSPで処理した生ゴミを処理場(ODもしくは,標準活性汚泥法を想定)に流入させた,長期観測データが無いと言うのが実情である.

しかし,ゴミ集積場所から固体ゴミを収集する頻度が減り,流体として生ゴミが集められ,下水処理場の処理施設的には現在のところ,あまり大きな問題が発生しないと考えられる.下水道の経営面においては,ディスポーザー導入家庭には,それ相応の負担金を課すと言う方法を執り行えば,新規に特別な施設を建設する事が基本的には無いと思われるので,経営的に,バランスを取る事も可能と考える.


2.管渠の維持管理と修繕費用の高騰について

管渠の場合,基本的には,管渠内に汚物が堆積しない様,最低流速を定め,下水中のSS分が沈殿しないようにしている.合流式と異なり,分流式は管径が細く,最大流量と最小流量の差が少ない.ディスポーザーで発生した野菜くず等であれば,比重は1に近いので,流速が速い時に掃流されてしまうと思われる.困るのは長繊維系の物:代表例:女性の髪の毛で,絡みつくと閉塞の原因だ.管渠では,小口径では塩ビ管,普通はヒューム管を使用しているが,接続の流線が複雑で,いかにも流れが阻害されるようになっていない限り,維持管理面では大きな問題は無いと思われる.ただ,下水中のSS分が多くなるので,管内洗浄にウォータージェット(高圧洗浄水)を使用するよりは,ピグを用いて,全断面のこすり洗いの様な管渠清掃が好ましいと考える. ウォータージェットの場合は,管路内堆積物が,野菜クズや砂などが想定されるので,ジェット水流により,下流方向へ掃流して清掃する場合,対象の沈殿物が分散してしまって,効率が悪いからである.

修繕については,ヒューム管が硫化水素の腐食により劣化したり,下水管を道路面下部に敷設する事から,走行荷重により不陸整正が生じる事が考えられる.これについては,DSP破砕くずが堆積して,硫化水素が発生しやすい箇所が新たに生じない限り,基本的には,下水は常時流れているので,通常の場合の修繕に比して,過剰にコストがかかることは無いだろう.それはDSP破砕物が,塩ビ管やヒューム管を削り取るほど硬いものではなく,管材より柔らかいからである.前に記述した,国交省の実験では,かきの貝殻をDSPで破砕して,毎日の様に下水管に流したが,1年と言う短い期間であったが,管渠内部に,DSP破砕物による,特定な傷などが出来る事は確認されなかった. この時の下水管の材質は硬質塩ビ管である.DSP破砕物として,下水管内に流す物の物理的特性を考えれば,なるほどと思う. データは無いが,管渠清掃・維持管理,修繕に関する費用は,DSPの有無では,それほど変わらないと思われる.

もし,DSP破砕物の流入により,管路が傷むとすれば,管を敷設後不陸が生じて,常時沈殿物が堆積する様な場所が生じ,その場所における,下水の嫌気的雰囲気から,ヒューム管が腐食する事が考えられる.塩ビ管は硫化水素による腐食は無いので,DSP破砕物の流下摩擦により,磨耗しない限り,それほど傷まないと思われる.


3.DSP利用による,下水汚泥の増加

下水汚泥は初沈汚泥+余剰汚泥を脱水したものである.DSPを利用した場合,生ゴミとして家庭廃棄物として捨てられていた分が,家庭排水のSSとして下水に混入する事から,当然汚泥量が増加する.質問者の論理の通りである. 私は脱水汚泥を対象とした研究を行っていないが,岩手県の某町における,牛舎の糞尿排水の嫌気性消化におけるコージェネレーションシステムのパイロットプラントに関する研究に携わってきた.まず,燃料電池だが,水素と酸素を燃料とすることにより,発電するシステムになっている.嫌気性消化でも水素は発生するが,この水素は,嫌気性消化の初期に発生する酸発酵期のものであり,この水素を後段のメタン発酵期に利用する方が,メタン発酵の効率が良い.

酸発酵期では,発生ガス中の水素の割合が低く,最大で発生ガスの5%程度が限界であるらしい.(これには更なる研究が必要)

一方,メタン発酵期以後の発生ガスの組成は,最大でメタン65%,二酸化炭素35%,硫化水素数ppm程度となる.したがって,私のパイロットプラント実験での発電システムは,ガスタービンエンジン+発電機+廃熱利用熱交換器とした.ガスタービンエンジンの基本構造はジェットエンジンに近い.したがって,高温排気の奔流が出る.それを熱交換器に通す事で,80℃近いお湯を得る事が出来,牛舎の温水暖房のみならず,温水による,牛や牛舎等の洗浄,雪の除去など多方面に利用できた.また,発電機も好調で,牛舎と事務所で利用する電力のほぼ全量をまかなう事が出来た.電気事業法の改正により,家庭の太陽光発電等で余った電力は電力会社に売却する事が出来るようになったが,PPの実験では冬場は,メタン発酵装置の加温に使用する電力を返送する為に,収支がトントンぐらい,夏場はその分が不要になるので,少し黒字になると言う感じである.しかし,まだ研究開始から,2年程しか経過していないので,天候等による各年の電力供給量の変動についての検討に関しては,今後の継続データの積み重ねが必要である.この実験は,まだ実験検討中であり,技術士の委託事項としてこれ以上詳細について説明できない.また,私自身は下水汚泥の脱水前の混合汚泥について嫌気性消化を行い,この実験で,嫌気性消化を現在のどこの処理場でも主流になっている,単段嫌気性消化よりも,多段式(おそらくは2段式)嫌気性消化が有利である事を解明した.これについての,1段目,2段目のSRTなどについては,おおよその目算は出ているが,連続的実証実験が,まだ不充分である.これに関しては,現在研究3年目であり,鋭意実験を継続中である.室内実験レベルなので,PP実験が必要となってきているが,現在予算不足で頓挫している状況である.

結論として,DSP利用により,汚泥が増加しバイオガス転換量が増加するが,その発生汚泥⇒バイオガス転換装置の高効率型を,現在私は研究中であり,まず,汚泥の最高何%をバイオガスに転換できるのか現在は明言できない.しかし,予測及び,研究目標としては,小消費電力型のODタイプの処理場であれば,汚泥消化によるバイオガスの発生⇒ガスタービン発電+熱交換器による発電とヒートポンプ運転で,処理場で使用する電力のほぼ全量をまかないたいと考えている.更に補助として,池の表面には太陽電池パネルをめぐらし,晴天時には発電電力を利用する.ただ,主ポンプのみは曝気機より瞬間的には更に消費電力が必要と思われるので,これについては,処理場全体が省エネ運転になるように,処理場の機器の運転システムを考える必要がある.

結論として具体的には,処理場で使用する電力分は,浮かす事ができる可能性があるし,可能であると目論んでいる.当然,下水道料金は処理場で使用する電気代分下げられると思うが,バイオガス発電などに必要な各機器がまだメーカーの生産競争状態になっておらず,市場価格が高いため,初期投資のローンの返済等で,すぐには下水道料金には跳ね返らない.ただ,維持費が軽減されると思われるので,流入水量がなかなか伸びない場合には,有効かと思われる.発生汚泥からのコージェネレーションシステムは,敷地内に余裕がある場合には,既存のある程度流入水量がある処理場に建設したほうが良いと思われる.


4.ゴミの処分費・有料化ゴミへの見解

どこの自治体でも,ゴミの処分費および最終処分地の逼迫から,家庭からの排出ゴミを有料化する方向になっている.ゴミの処分有料化により,家庭からの排出ゴミが減量化されれば喜ばしいが,逆に不法投棄が増加した場合は困った事である.これは別問題なので割愛.

さて,一般家庭では,生ゴミとして排出していた食品残渣等がDSPにより,下水として処分できるので,非常に助かる.4人家庭で,1日に排出される生ゴミは500g/1家庭.程度であるらしいので,この数値に家庭数を掛け算した数値が簡単には削減される生ゴミ量である.またDSPで下水管に生ゴミ発生同時に排出されるので,ごみ収集場所の環境が衛生的になる.また,ゴミ収集量も減る.腐らないゴミが多くなるので,収集に対する労務も軽減できる.

また,生ゴミは含水率がおおよそ70〜80%と高く,通常はそのまま火をつけて着火する事は無い.したがって,ごみ焼却処分において,生ゴミが多い場合,補助燃料として通常重油が必要である.生ゴミが含有しなければ,焼却処分の場合は,補助燃料の重油が不要になる.したがって,家庭ゴミの排出処分については,全体としてコストが安くなり,家庭ではゴミが有料化することで,発生が抑えられることから,自治体としては,ゴミ処分の経費削減が可能と思われる.

逆に,コストが高くなる面として,ゴミを焼却した時の発生熱量が高くなるので,既存のごみ焼却施設の耐熱性に問題が生じる.ごみ焼却炉の耐熱煉瓦などを新しくする可能性がある.また,下水汚泥を消化・脱水して出来た,汚泥脱水ケーキは明らかに量が増える.脱水ケーキ全量をメタンに転換できるわけではないからである.どうしても量が増える.これを,有効利用する方策がある場合には問題は無いが,脱水ケーキを単純に埋め立て処分する場合には,産業廃棄物として処理する必要があり,その経費が高騰する.

現時点で,DSPにて家庭ごみを全量下水道に入れてしまうという処理区域を持った下水処理場が無く,DSPの可否について検討中であるので,簡単に回答できない.歯切れが悪いのだが.

まず,DSP処理による前段階の話として,家庭ごみがどれだけ減量化するかの実験もしていないし,DSP処理の処理区域の下水処理場の消化脱水ケーキの増量分も検討されていない.家庭からの排出するゴミは,DSP利用による生ゴミの単純減少分と,有料化によるゴミ廃棄量の減少により,一般ゴミは減量すると思われるが,これにも受け入れ側に問題がある.(処理設備の問題)

一方,DSPの利用により生ゴミは減るが,それは処理場の消化脱水ケーキの増分になる.今度はその処理費が多くなる事が問題になる.質問は簡単ではあるが,まだ研究段階としか答えられないのが残念である.また,その研究について,本格的にやっている研究機関があるのか?と問われた場合,「分からない」としか答えられない.具体的に言えば,文部省などの科研費等が削られているので,大学法人等での研究は困難であるのが現状である.少なくとも,私が関係している大学法人では,この研究を継続はしているが,現在は資金難で中断している.研究費を年間約三千万円も下されば,僕自身が某大学の施設を利用して共同で研究させて頂きたい.(僕の人件費+装置の運転費+研究・実験費)


5.これからの,地方における市民生活

文豪兼東大の物理学教授:寺田寅彦氏はかつてこう言いました.「物理学者としては当たり前の事が,なぜ政治家には当たり前ではなくなるのだろう?」.今でも名言だと思います.技術士として,最もベストだと思われる提言をしても,地方の議会や首長のしがらみなどで,最も非効率・ばかげた考えに捻じ曲げられてしまう.私は11年間,役所に勤務したが,その役所の中でも,技官と文官のしがらみがあり,技術的にベストの案が,文官の理解不能な案にすりかわり,そのどう考えても成り立たない案について,もっともらしい説明を無理やりこじつけるよう求められた.そして,地方議会などでは,その政策説明の為に,まさにデータ改ざんした資料を何回も作り直させられ,無駄にコピーした資料は数知れず,住民説明会では,でっち上げの説明をした.役人の仕事は,市民を向いてやるものではなく,首長と有力議員のご機嫌伺いをするようにやるものだと体に叩き込まれた.今の国会および,自民党と公明党の対立などを見ても同様に感じるのではないですか? 彼らの勉強資料なんて,下っ端の技官がその人に都合いいように捻じ曲げて作った資料に,高級官僚の文官が文章をつけた嘘の勉強をして答弁している.大体,大臣なんて,嘘を言って,自分の地元にお金を落として,人気を取って何ぼの世界ですから.その金は?有権者の税金.

地方における市民生活ですか? 自分で自衛するしかないのでは? どうせ国は,特に政治家は自分の腹を肥やしてからじゃないと,有権者の事など考えません.大体安倍元総理の奥さんが「スーパーで百円均一」の買い物にわれ先ととびこむ?そんな話ないでしょう? 牛肉問題だって,政治家が食べているのは国産松坂牛の上肉.庶民は吉野家の牛丼.政治家が吉野家なんて行かないでしょ?BSEの問題なんて,自分の食べ物じゃないから真剣にやるわけないですよ.

この国は2極化して来ていると言われていますが,まさにその通り.どんな手段を使っても金持ちになれば,上流階級でリッチかつ保障された安全な税金面も優遇された生活.金持ちになれなければ,税金負担が更に多く,金持ちになるチャンスも少ない下流生活.老人など介護する人が居なければおば捨て山行き.老人になる前に金を稼いだ人は,生活至便な場所でリッチな余生.金の無い人は死ぬまで税金搾取されて,払えなければ孤独死.そんなもんです.事実実際そうですから.行政の補助なんて無いのも同然.

結論として,これからの地方における市民生活は,希望が無い下流の生活でも望みだけは捨てないで,細々と生きていき,自給自足しながら野垂れ死にを覚悟する.だと思います. かなり極論ですが事実.地方に希望?少子高齢化の時代にそんなものあるのかな? 自分の身は自分で守れ.税金逃れの為に住所不定になって,自分の食べる分を自作自農または狩猟で手に入れるしかないでしょ?

逆にお聞きしますが,今の日本自体に発展的な明るい将来があると思われますか? 破滅的な気分なれば,刑務所での無期懲役計画的気分になってしまいます.事実そういう人が増えて,その様な根拠を持った犯罪が急増しているのが現在の社会状況です.今のままでは,あきらめて,でも希望を捨てず,極貧の耐乏生活を続け,一部の金持ちに搾取され続けるか.やけくそになって犯罪に走るか.二者択一の社会になると思います. これを打開するには?  政治を枠組みから大きく変える必要があるのでしょう.二世議員が蔓延している国会から何とかしなければならないと感じています.国会を何とかしなければならないのだけれど,我々小市民の力で何とかなるのかと言うのが,ものすごく心細いところです.質問者同様に,私もどうしたらいいのだろうと思っています.