下水処理水にオゾン酸化処理を
 


出張時に飛行機から眺めた印象では季節により東京湾、大阪湾、瀬戸内海、博多湾など赤潮や青潮の大きな縞模様が見え、松山空港に着陸する前の瀬戸内海もひどい汚染状況であったときがあった。

日本だけではない。9月にロサンジェルス空港を飛び立って、すぐ右側の窓から眺めていると、観光地のサンタモニカ湾、マリブからサンタバーバラあたりまでの海岸沿いが広い範囲にわたって赤潮の縞模様であった。サンタモニカ海岸ではマリンスポーツを楽しむ多くの市民や観光客が何時も見られるが、水質環境に関心のある人ならこの地域でのマリンスポーツを避けるであろうと思われる。

これらは富栄養化の現象で、下水処理水から放流されるBOD、COD、T−N、T−Pなどの汚濁負荷がその地域の環境容量を超えているのである。このような水質環境地域が国内外に増加していることは由々しき事である。

羽田空港からモノレールで都心に向かう約20分間を近くの水域を眺めていると、下水の高級処理や高度処理の導入で昭和40年代より相当改善されたが、まだ色が黒くて少しも青くない。海水に希釈されながら下水処理水が満干の作用で外海への拡散していく。よく見ていると海に近い護岸施設ほど牡蠣などの付着が多く見られ、潮の満干時には魚が飛び跳ねることもあり、下水道整備により生物生息環境が徐々に回復しているようだ。

この黒っぽく見える成分は人の心を憂鬱にする。沖縄の宮古や石垣の海のような透明度のある青い海とは言わないが、それに近い水質であってほしいと願うものである。

京都市の吉祥院処理場では友禅染の染色排水を処理するために純酸素法で難分解性有機物を酸化分解し、オゾンを利用して消毒する処理法を採用している。その処理水の透明度は高く煌いており、桂川へ放流された処理水は河川水と比較して格段に良く、綺麗な処理水が縞模様を描いていると聞く。

大阪市の浄水場では長年、淀川の原水に含まれる臭気物質に悩まされ、現在は全てオゾン酸化と粒状活性炭吸着法による高度処理を導入している。高度処理導入による処理単価アップは企業努力で無くし、「おいしい水」を市民に供給し、「大阪の水道水はまずくて飲めない」との苦情を完全に撤去することに成功している。

人口集中地域での水環境容量の限界から、高級処理に砂ろ過処理された下水処理水はできるだけ早い時期にオゾン酸化法を導入するのが、より良い水環境を子孫に残し、肉体的にも精神的にもわが国が繁栄する原点であると考える。オゾン酸化法は電力消費のみで汚泥の増加もなく、規模にもよるが処理単価を大きく上げるものではないので水環境容量の少ない地域から下水のオゾン酸化法の導入を前向きに検討すべき時代が到来したと考える。

水道公論-巻頭言より載録