ディスポーザー
 

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内田信一郎
 

ディスポーザー


単独ディスポーザー導入時の下水道への負荷は生ゴミ発生量が1人1日250gであり、この全てがディスポーザーに投入されるので下水道に与える負荷増が大きいとされ、従来自粛又は禁止されてきた。しかし高齢者社会の到来、利便性等の面から、合流式下水道区域でも「単独ディスポーザー」や「排水処理システムディスポーザー」の設置を望む要望が高い。特に後者の方式での設置台数が年間約5万台の勢いで増加している。

平成17年7月に国土交通省や国総研下水道部から発刊された2冊の報告書によると、生ゴミ発生量や生ゴミのディスポーザーへの投入率が以前とは異なるので、ディスポーザーを導入しても下水道には大きな影響がないであろうと読み取れるものであった。生活様式の変化で1次料理したものをスーパー等で購入し、それを台所で2次料理する程度であるので、ディスポーザーに投入する生ゴミ量は確かに減っていると思う。

日本下水道新聞の記事によると、北海道滝川市では条例を早速修正して下水道使用料の他にディスポーザー使用料月525円をこの4月から徴収し、また北海道庁は歌登町の実証実験よりもっと大規模なディスポーザー導入時の影響調査を行なう等とあったので、その結果の公表にも注目している。単独ディスポーザーの導入は別途下水道使用料を徴収されても、特に雪に長い間閉じ込められる北海道や東北地方では今後、さらに普及するであろう。

ディスポーザー設置を反対する有識者等の意見は理解できるが、水洗便所が下水道に取り込まれた時点でディスポーザー導入は運命付けられたと考えている。さらに、計画原単位の乖離問題、人口減少の問題、省エネルギー対策、地球温暖化対策などの問題を下水道は抱えている。これらの諸状況を考慮すればディスポーザーの導入は必然なことと考える。

2006年7月18日 日本下水道新聞「エアレーション」掲載のものをhtmlで載録


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非常勤講師


現職の時代に近隣の大学で下水道工学を教える機会があった。小生もその機会に恵まれ、私立及び市立大学で、3年生か4年生に佐藤昌之著の「下水道工学」や日本下水道協会編の「下水道施設の計画・設計指針と解説」及び独自の演習資料などをベースに下水道工学を教え、現在も母校の京都大学で非常勤講師を勤めさせてもらっている。講師受諾は自分の勉強と覚悟を決め、常に新しい技術の取得、下水道法関連の法律改正など、頭につめこまねばならない毎日で、講義の準備に土・日曜日もなかった。

自分達の学生時代も同じであっただろうとは思うが、授業中に寝る学生、雑談する学生の様子は差こそあれ同じである。何とか講義に興味を持たせる努力し、ある程度のノウハウは取得したが、所詮、新米教師である。「講義をしっかり聴いて試験で合格点を取らないと単位が不足し、困るのは学生だ、又は親だ」ともっと厳しく口酸っぱく言っておくべきであった。

ある年の答案用紙に「この単位が取れないと進学できないのでよろしくお願いします」との内容のメモが書いてあった。どう点数を配慮したか全く記憶にないし、その学生が進級できたのか非常勤講師ゆえに詳細は知らなかった。

今の会社に席を置くことになって、ある会合で、向こうから挨拶に来た若者がいた。顔は覚えていない。話を聞くと「あの時お世話になった00です」と名刺をくれ、上記のメモを答案用紙に書いた学生のことは直ぐに思い出した。彼が卒業してから既に20年以上になり、某コンサルタントで重責を担っていてくれていたので非常にうれしく教師冥利を感じた。今年、京都大学での非常勤講師で最後の講義が終わった時、学生から「有難うございました」と初めて声をかけられ、準備の疲れもどこかへ飛んだようであった。「何事にもその場で最善を尽くす」ことを人生教訓の1つにしている。

2006年9月12日 日本下水道新聞「エアレーション」掲載のものをhtmlで載録


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技術士受験指導


大阪市を2年前倒しでの退職後は、日本下水道事業団参与をへて、コンサルタント会社に席を置いて自分の経験を生かせてもらっている。会社の技術社員の構成を見ると今後10年以内に定年を迎える技術士資格者は15人程と多いが、若い社員に技術士資格者が少なかった。彼ら若い技術社員の技術士受験のバックアップも重要な仕事の1つとして、平成14年度から「移動塾」と名づけて各事務所を別の技術士資格者と2人で廻って集中的に社内指導を開始した。結果として、初年度はゼロであったが、3年間に6人の合格者が出て非常に喜んでいる。

多くの社員は日常の仕事が多忙で受験勉強する時間が無く、帰宅しても疲れて休息を取らざるを得ない状態であった。本当はこれでは合格が厳しいが、これが現実であった。以前から数名は合格したいと強い信念を思っていて民間の受験指導センター等で添削を受けて独自に勉強していたが、今回の「移動塾」が更にやる気を起こさせるきっかけとなったようだ。始めると熱心に一緒に勉強して、大きな高い壁を乗り越えてくれた。携わったものとして望外の喜びである。

この指導のポイントはよく言われるように「如何にマンツーマンでキャッチボールが旨く出来るか」で決まることである。平成18年度も次の10年、20年先を担う若手社員の努力が報われることを祈っている。社内でも「仕事もこなし、技術士の資格を取得して1人前の技術者である」との評価が定着している。会社及び下水道界の発展のため、下水道に携わる技術者のレベルアップと、さらに業務の国際化や海外で活躍する場合にも技術力の相互承認ができるように、日本技術士会の
APECエンジニアリングに登録する等、互いに切磋琢磨せねばならないと考えている。

2006年11月7日 日本下水道新聞「エアレーション」掲載のものをhtmlで載録


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学校教育と家庭教育


自宅からバス停までの数百mの間は、小学校の児童が登校するのとすれ違うルートになっている。とくに雨のとき、児童は傘をさして、前をよく見ないで道いっぱいになって歩いてくるので非常に危険で迷惑である。毎朝、元教師の方がボランティアとして通学ルートに立ち、児童の名前を覚えているので声をかけているが、道いっぱいに広がって歩いていることに何も注意しない。

恒例となっている大学の水環境工学研究室の新年会で恩師の故合田健先生と学校教育と家庭教育について話し合ったことがあり、同感することが多かった。亡くなられる1年前のことであった。

児童も学生も含めて一般に学力低下、相手の立場の無理解、寛容力不足、躾のなさ等と言われている。戦前の統制力あるやり方が軍国主義的である等と反論され、学校教育の方針が逆に自由を尊び、ゆとりを持って学校生活を楽しませることに重点がシフトされた結果がこのように現れているのであろう。自由と責任のバランスが崩れている。

一方、家庭教育は核家族化と共働き生活が原因で、家庭教育以前の問題として子供の躾が出来ていない。女性が一生に産む子供数が1.25まで低下し、大勢の兄弟姉妹に良い意味でも鍛えられることが少なくなった。一人天下、放任主義がまかり通っている。鍵っ子、学童保育などが当たり前の時代である。経験豊富な祖父や祖母に処身術、躾、多方面の知識及び失敗事例などを教えてもらうことが少ない。日本の将来を託された児童が正しく判断が出来、尊敬される人格と躾を身につけられるような学校教育と家庭教育が共に非常に重要である。親は子の立場を尊重しつつ、道を誤らないように、他人に迷惑を掛けないように、感謝の気持ちを忘れないように言葉をかけ、見守っていかねばならない。

2006年12月26日 日本下水道新聞「エアレーション」掲載のものをhtmlで載録


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アナモックス反応
 

日本で活性汚泥法が採用されて約80年が経過し、主流の標準活性汚泥法は非常に優れた処理法であるが、多量の電力を消費し、多量の難脱水性余剰汚泥を発生する等、省エネルギー、省スペース、汚泥の処理処分等、現在の評価尺度から見て、再考すべき時であろうと思う。

窒素やリンまで同時除去が出来る嫌気・無酸素・好気法等が、また小規模処理施設では汚泥の減容化等に重点を置いた嫌気好気性ろ床法等が実用化される等、21世紀は嫌気処理プロセスがより注目されると思う。

最近、嫌気性アンモニア酸化法が注目されている。嫌気状態でアンモニアを直接、窒素ガスにして除去するもので、熊本大学、JS、大阪市、島根県やメーカー等でも取り組んでいる。嫌気状態でアンモニアが直接窒素ガスとなって脱窒されるので処理過程の単純化、外部添加BOD源の不要、汚泥の減容化、省エネルギー、省スペース、コスト縮減等をもたらす多くのメリットがある。

この処理法はオランダのロッテルダム市の下水処理場や三重県の民間工場排水処理施設でも実用化されているが、同時にまだ基礎研究も上記以外の多くの機関で進められている。下水では汚泥処理施設からの場内返流水中の高濃度な窒素を除去する目的に研究・利用されている段階で、流入下水からアンモニアを直接除去する技術は今後の課題である。

今年の下水道研究発表論文に初めてバチルス菌が汚泥減容化に大きな効果があると発表された。

現状の社会経済状況から従来の活性汚泥法の固定観念を打破して、バチルス菌やアナモックス菌を利用した画期的な下水処理分野への応用に関する技術開発とエンジニアリング化に大きな期待を寄せている。

2007年2月20日 日本下水道新聞「エアレーション」掲載のものをhtmlで載録