DESAR実施例
 

前回、本の紹介記事のなかで、DESARの実施は難しいのではないかと、一言私見を述べさせていただきましたが、これについてもう少し付け加えたいと思います。

省エネで地域の資源循環をも考慮した下廃水処理システムとして
DESARを推進していくという趣旨はまことに尤もであると思いますが、このシステムの実施には廃水の分離や水洗方式の縮減など個人の日常生活に変更を伴うことも出てきます。こうしたことからDESARは個人の理念と努力に支えられて成立するシステムでもあるといえます。システムの歴史的選択という観点から、DESARの実施例と現地での評価を重点的にみていく必要があります。

改めて、その視点からこの本で紹介される実施例をみてみますと、まず廃水の嫌気性処理については、ペルーの集落排水、タイの豚舎排水の嫌気性処理の実施例など、その処理技術の内容について克明な紹介があります。次に分散型、所謂オンサイトの実施例として、ノルウェーのコンパクトなオンサイト処理施設の紹介がありますが、これは日本の浄化槽に一脈通じた技術でもあります。そしてその日本の浄化槽技術の紹介に一章が割り当てられています。同様にフィンランドの湖流域地域における土壌処理による分散処理と市民参加の事例が論じられていますが、この中ではコンポストトイレの失敗例も紹介されています。

しかしながら、以上の例は
DESARのそれぞれの構成要素の実施例ではありますが、本来の完全なDESARシステム実施例ではありません。本来のシステムの実施例としては、ドイツのFreiburgの例が挙げられており、ここでは真空式トイレでし尿を分離しこれに家庭バイオ廃棄物を加えて嫌気性処理し、バイオガスを回収するシステムとなっています。また、同じくドイツのLuebeckの新設団地(350人)の試みが紹介されており、ここも真空式トイレを設置し、し尿分離を図っています。そして、尿分離トイレの実施経験として、スウェーデンにおける3000個の設置例が紹介されています。

 
私どもが本当に追跡してみるべき事例はこれらのものなのだと思います。これらはまだ新しく導入段階にあるように思えます。DESARが21世紀を先導するシステムとなるのか、これらの先進的事例をじっくり評価する必要があります。

 佐藤 和明