食器洗い乾燥機は環境にやさしいのだろうか
2006.9    NOGI      
 最近食器洗い乾燥機が水消費が少なく環境にやさしいとして宣伝されています。果たしてメーカーの言うとおり環境にやさしいのか考えてみました。

○食器洗い乾燥機の概要
 家庭用では6人くらいと2〜3人用の2種類を売り出しているところが多いようです。その水道使用量は1回10リットルくらい。約100wのモーターと約1kwのヒーターがついています。電力、水の消費量は食器の容量が変わっても同じくらいです。大型でも10リットルくらいの水消費というのは大変少ないですね。

○節水で宣伝
シャープのHPをみると節水とガス代節約効果を具体的に説明しています。QW−SL1で手洗い1回104リットルに対し10リットルで済むとし、またガス代0.25立方メートルが節約されて年間37000円も得としています。この計算は食器点数60点、小物点数24点を一日2回洗うとしています。

環境を考えるとどうでしょうか
 環境家計簿による比較
環境家計簿の値を用い月ベースで考えます。環境家計簿の係数はいろいろなものがありますが、ここでは(社)環境情報科学センターのものを使ってみます。
 CO2の発生量原単位を電気1kwhあたり0.12kg、都市ガス立方メートルあたり0.64kg、水道立方メートル0.16kgとしています。
 「CO2排出量の削減」
1回の給湯でガス使用節減量は0.25立方メートルで月当たり15立方メートル。これから9.6kgCO2の節減になります。1回94リットルの節水は 5.6立方メートル/月となり、環境家計簿から0.9kgCO2の節減になります。合わせて 10.5kgの節約
 「CO2排出量の増加」
一方 1回1kwhの食器洗い乾燥機の電力消費から、 月60kwhで7.2kgCO2の増加

 「差し引き」 で、3.3kgのCO2節減をもたらすことになります。

○そうかな
  しかしここで計算している洗う食器の量ですが、最大容量と思われる食器点数60点,小物点数24点でちょっと多すぎる感じです。実際の家庭ではこれの半分以下と考えられます。
 食器点数が半分の場合、手洗いでは水道もガスも半減するのですが、食器洗い機のエネルギー消費は殆ど変わりません。これを計算すると、
食器洗い機による節減は、水道で0.45kg、ガス使用で4.8kg、CO2節減合計5.25kgになります。一方食器洗い機のエネルギー消費は7.2kgですので差し引きCO2排出が1.95kg増加することになります。逆に食器洗い乾燥機がCO2を増加させることに。

○考えること
 以上から食器洗い機の使用が環境にやさしいと言えるのは最大容量で使った場合であり、環境にそれほどやさしいというものでもないと考えられます。
 ここで浮かび上がってきたのが水道水を加温するために使用されるエネルギーによるCO2消費です。水道のCO2消費の10倍にもなります。また熱エネルギーは大都市のヒートアイランド現象の大きな要素になっています。
 節水といって、エネルギー消費で桁違いのCO2増加をもたらすようなことは問題です。
 手洗いでは温水使用を控え、食器洗い機で乾燥工程をやめて、フキンを用いたり、自然乾燥にするなどすることにより大幅にCO2発生を抑えることができます。やはり、電力やガスなど熱エネルギーの節減が一番重要です。
 なお食器洗い機の生産によるCO2の消費は耐用年数5年として月0.65kg程度と推定されます。