世界の列車トイレ

              ―フランス−

                        NPO21世紀水倶楽部

                             清水 洽

 

 フランスの鉄道は、イギリスに続き歴史は古く1828年に鉱山鉄道として開業しています。当初はすべて民間によって建設されていましたが、第2次世界大戦中の1938年に人民戦線内閣のもとで全国の鉄道を統合してフランス国鉄(SNCF)が誕生しました。1970年以降、日本と同様に動力と路線の近代化がすすめ、現在は、営業キロ3万km、電化区間が1.3万km余で推移しています。軌道幅は日本の新幹線と同じ1,435mmがメインで、一部1,000mmの軌道幅があります。

フランスの鉄道といえばTGVによる高速鉄道ですが、日本と同様鉄道への依存度は低く国の援助のもと、1997年に構造改革を行い、上下分離により鉄道のインフラはフランス鉄道路線公社(RFF)と鉄道輸送事業のみを行う公共事業体(SNCF)とになっています。

 私はフランスにはアシェール下水処理場の下水汚泥流動焼却御や汚泥熱処理プラントの調査に2回ほど行きましたが、鉄道に乗車することができませんでした。今回はNPO21世紀水倶楽部理事長の亀田泰武氏と京大鉄道研究会OBの平澤義也氏との写真と情報とで報告いたします。

写真1 パリ―の象徴エッフェル塔   1977.5.22

   

写真2 アシェール処理場の円形中心駆動方式の最終沈殿池 1977.5.23

写真3 私の調査目的、下水汚泥熱処理設備の反応缶と熱交換器  1977.5.23

 

・高速鉄道

フランスの高速鉄道はもちろんTGVです。日本の新幹線の成功に追い越せ追い抜けと260km/h1981年に走り始めました。編成前後に動力車を付けた動力集中方式、連節台車、2編成併結運転など日本の新幹線と異なる方式で1990.5.18にはTGV−Aにより鉄輪方式の世界最高速度515.3kmを記録しています。高速鉄道網はパリを中心に東西南北に広がっており在来線と同じ軌道ですので各都市の主要駅にまで乗り入れています。

  

写真4a パリ―・モンパルナス駅でのTGV−R (亀田 2011.10.5)

写真4b パリ―・モンパルナス駅ホームの列車掲示板 (亀田 2011.10.5

 

パリ−シャルルドゴール空港やパリ―リオンの地中海線には輸送力増強のために、1996年にオール2階建てのTGV-Duplex(デュプレックス)が開発され、2両編成連結で就航されています。

 

 

写真5a.b パリ・リヨン駅でのTGV−D、 パリとフランス第2の都市リヨン間の輸送力強化のため2階建てのTGVが運転されています。(亀田 2011.10.2

 

今、SNCFは新幹線と同じ動力分散方式のAGVを開発中だそうです。いずれにしてもTGV から派生したAVE(スペイン)、タリス(ベルギー・オランダ・ドイツ)、ユーロスター(イギリス)KTX(韓国)などが活躍中で、日本の新幹線のライバルとなっていす。

TGVの列車トイレはすべて真空式トイレでタンクに貯められ、それぞれの車両基地で引き抜かれ処理されているようです。

 

・国際長距離列車

過ってはパリ―東駅からいスタンブールまで運転されていたオリエンタル急行はヴェネツィア発になりましたが、週に2回(夏には3回)パリ東駅―発モスクワ行きが、ベルリン行き編成とミュンヘン行き編成との間に挟まれ、新しい寝台列車として運転されています。またもう一本は、週1回ニース駅発モスクワ行きがミラノ、ヴェローナを経由しブレンナー峠を超えウィーン、チェコを経て、ブレストで台車を交換してモスクワへ2日間をかけて運行されています。モスクワ〜ブレスト間はロシアの食堂車、ワルシャワ〜ニース間はポーランドの食堂車が連結されているそうです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

写真6a モスクワを木曜日の夕方発車し土曜日の朝ニース駅に到着した国際列車、ニース発は19:43になっています。(亀田 2011.10.22

車両の汚物流し管は確認できませんが、地上設備から考えて水洗トイレの汚物は垂れ流しと思います。

 

 

写真6b ニース駅ホームでのモスクワ行の掲示板(亀田 2011.10.23

 

写真6c  ニース駅(亀田 2011.10.22

 

・ローカル鉄道

 

 

写真7a パリ―モンパルナス駅でのChartres行の2階建ての普通電車(亀田 2011..28

写真7b 2階建て電車の列車トイレ、鍵が掛かっており中のトイレは確認できませんが汚物は垂れ流しです。(亀田 2011.9.28)

 

 

写真8a Moret駅にて待機中の普通列車  (亀田 2011.10.2

 

写真8b,c リヨン駅発Montargis行普通列車の水洗式トイレ、水洗は足踏み式です(亀田 2011.10.2)

 

写真8d 同列車のトイレットペーパー(亀田 2011.10.2 )

写真8e 同列車の汚物流し管、パリ・リヨン駅にて(亀田2011.10.2)

 

 

 

写真9a Moret駅に到着した下り電車(亀田2011.10.2)

 

 

写真9b,c 同列車のトイレの汚物流し管 (亀田 2011.10.2 )

 

 

写真10a,b,c パリ―北駅での列車掲示板とタリス、INT列車  (亀田2011.10.3 )

 

 

  

写真11a シャンティー駅からの帰りに乗車した列車、パリ―北駅にて (亀田2011.10.3 )

写真11b 同列車の真空式トイレ (亀田2011.10.3

 

 

 

写真12a ノルマンディー地方での普通列車トイレ、汚物を流すとごぼごぼと音がするので水洗トイレの汚物は垂れ流しではないかな?(平澤2011.10

写真12b 同列車の水洗トイレの手洗い(平澤 2011.10

写真12c 同列車のトイレ男女別トイレになっています。男女別トイレはフランスでもここだけでしょう(平澤 2011.10

平澤12d 同列車パリ サン・ラザール駅(平澤 2011.10

フランス国鉄(SNCF)は行先によりパリに5の駅を持っています。時計方向に北駅、東駅、リヨン駅、モンパルナス駅、サン・ラザール駅です。

・まとめ

 フランス国鉄(SNCF)の車両トイレは高速鉄道のTGVや新型車両は真空式トイレで環境改善に取り組んでいますが、多くの旧型車両のトイレの汚物は垂れ流しです。

SNCFは地上設備の整備に取り組んでいますが、営業成績の良い高速鉄道のTGVは航空機との競合していますし、首都圏旅客輸送は、乗客の3/4は割引料金を利用して運賃収入は運営費の40%しか賄えず、残りの費用は交通賦課金と公的負担に頼っており苦しい経営状態です。    

またSNCFは鉄道貨物輸送も担当していますが、鉄道貨物は国内の輸送市場の2割を占めているものの貨物部門の成績は悪く、国の援助のもとに苦しい経営を強いられているようです。

 

・引用文献

1)三浦 幹夫、秋山芳弘「世界の高速鉄道」潟_イヤモンド・ビッグ社 2008.2.9

2)(社)海外鉄道技術協力協会「最新 世界の鉄道」鰍ャょうせい 2006.7

3)中村卓之「ヨーロッパ鉄道ア・ラ・カルト モスクワからの寝台列車」鉄道ファン2012.4