合成洗剤と排水
 洗濯、入浴、皿洗いなど水を大量に使う時に洗剤が使われています。ボデイシャンプー、リンスを始め様々な入浴剤、化粧品が登場していますがこれも入浴時に全て排水されるのです。
 石鹸の使用量は一日2g程度ですが、シャンプー・リンスなどは6g、洗濯などの合成洗剤は20gも使われています。
 家庭生活の変化が環境に大きな影響を及ぼしたのは電気洗濯機の普及でした。1960年代、生活水準の向上とともに電気洗濯機が急速に普及しました。洗濯の際、合成洗剤が使われましたが、当時の洗剤は活性汚泥によって分解されにくく、このため下水処理場の生物反応槽や処理水排水口から大量の泡が発生するようになり、慌てて水面にシャワーをかけて泡を消したり、泡が出る落差をなくす工夫をするなど処理場の維持管理担当職員にとって大問題でした。
 住宅地など家庭下水の流れ込む川もいたるところで泡が大量に発生していました。
 発泡問題はソフト化と呼ばれる、微生物によって分解されやすいかたちの洗剤への切り替えの実施によって下水処理では殆ど解決されました。
 現在のところ合成洗剤の分解性が石鹸より悪いことはないとされています。
 合成洗剤にはこの他リンを含む問題がありました。リンは洗濯水中のカルシウムやマグネシウムなどの硬度成分による洗剤としての能力低下を防ぐために配合されていました。湖沼などの水質保全のためにはリンや窒素が問題になります。このため洗剤中のリンの削減が大きな問題になりました。1980年代に無リン洗剤が登場し、5年くらいで殆ど無リン洗剤となりました。この影響は人口一人当たりの汚濁発生負荷量にあらわれています。川などの水質がどう変化するか予測検証する水質計算のもととなる一人当たりの汚濁の標準発生量について、リンは屎尿では一日1.2gですが、洗濯を含む雑排水負荷は80年代の多い頃1.2gとされていました。最近では大幅に少ない0.3gが計算の標準になっており、一人当たりの総負荷では2.4gから1.5gへとリン負荷は減っています。
 我が国の石鹸の生産量は1960年頃がピークで年40万トンでした。今は半分の20万トン程度です。  一方合成洗剤は洗濯機等の普及により消費量が急増し1950年代が数万トンであったのに今は年100万トンのレベルになっています。合成洗剤使用量は1990年頃まで増加の一方でしたが、コンパクト化洗剤等の登場もあるようでその後頭打ちとなっています。