ノロウイルスの解説                   2006.6    Nogi

ノロウイルスは最近生態の解明が進んでいます。どうも食あたりなどお腹をこわしたときの犯人の多くが、このウイルスのようです。
  ノロウイルスの特徴は

ウイルス下痢症の因子として最も多い
冬に発症が多い
症状は致死的でない
培養できない 腸管系ウイルスの一種
ヒトの体内で増加したのち排出、環境中で生き延びて、ごく一部がヒトの口に入る
なかなか死なない
特に塩素に強い(下水処理場の塩素消毒、上水道の塩素消毒をすり抜ける)

 近年、遺伝子レベルの分析技術が進み、昔から食あたりなどといわれてきた症状の犯人の多くがノロウイルスであることがわかってきました。ノロウイルスによる発症は季節的に変わり、11月くらいから2月くらいの冬に多く発生しています。生ものを食べることが多いためのようです。

●ノロウイルスの症状はどんなもの
 潜伏期間(感染から発症までの時間)は24〜48時間で、主症状は吐き気、嘔吐、下痢、腹痛であり、発熱は軽度です。通常、これら症状が1〜2日続いた後、治癒し、後遺症もありません。また、感染しても発症しない場合や軽い風邪のような症状の場合もあります。

●ノロウイルスの水循環システム内でどう挙動するのか
 下水処理場の活性汚泥処理で9割程度除去されます。しかし塩素に強いため、下水処理場や浄水場の塩素消毒をすり抜けることに。一方O157などの大腸菌は塩素消毒に非常に弱いので除去することができます。
 ノロウイルスの数が少ないときは環境に出るものが少ないのですが、感染が増えた場合流れ出る数も増えていきます。流れ出たのち増殖はしませんが、水環境のなかでカキなど魚介類に蓄積し、これを生でたべて感染が広がります。
 プールでも消毒を適正にしていないと広範囲の感染の可能性が出てきます。

●腸管系ウイルスとは
直径20〜100ナノメートルで核酸(RNA,DNA)が蛋白質に覆われた構造
宿主生物の腸管内で増殖し,糞便と共に体外に排出される
100種類以上がヒトを宿主としている
主な症状下痢,嘔吐,発熱,麻痺
感染経路食品(貝類),飲料水,遊泳行為,感染者との接触

●糞便などから経口感染するウイルス・原虫にはどんなものがあるのだろう
○ウイルス
 . アデノウイルス、アストロウイルス、ノロウイルス、エンテロウイルス、A型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、ロタウイルスなど
○原虫類
. サイクロスポーラ、クリプトスポリジウム、ジアルジアなど


参考
H17.5.12(木)研究集会2005 「都市排水と病原性微生物」 −下水道システムの原点−21世紀水倶楽部
      http://www.21water.jp/k1/ken05/index3.htm
ノロウイルスに関するQ&A 食中毒・食品監視関連情報 厚生労働省http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/kanren/yobou/040204-1.html
ノロウイルス(ノーウォーク様ウイルス、SRSV)による感染性胃腸炎について 横浜市衛生研究所
http://www.city.yokohama.jp/me/kenkou/eiken/infection_inf/srsv1.htm
塩素による飲料水中のノロウイルスの不活化  広島市
http://www.city.hiroshima.jp/shakai/eiken/kan_center/others/fukatuka/nv/nv_002/nv_volunt_1.htm