江戸の衛生管理は世界一だった

 徳川幕府によって政治経済の中心と定められた江戸ですが、衛生管理もしっかり計画されました。
 まず水道水ですが玉川上水を建設して多摩川から江戸まで水を引き、江戸市内には水道のネットワークを整備しました。水道管は木製や石造りのものでしたが機能を果たしていました。        玉川上水(羽村市HP)

 また便槽付のトイレを設置して、溜まった屎尿は近郊の農家が定期的に集め肥料として使っていました。トイレは大名や武士の屋敷だけでなく、庶民の住んでいた長屋でも共同便所として設置されていました。


 当時、ヨーロッパでは家にトイレをつくるという基本的なことも普及していませんでした。おまるみたいなものを使いあとは適当に捨てていたようです。


 屎尿は窒素、リンなど植物の生育に必要な肥料成分が含まれています。当時化学肥料はなく、糞尿は肥料として貴重で経済的価値があったのです。経済的価値があれば喜んで持っていかれます。回虫の卵などの汚染の問題はありましたが、江戸時代にはこのくみ取りトイレによる資源リサイクルシステムができていたのです。
  このようにくみ取りトイレを中心にした廃棄物の排出、リサイクルシステムが確立され、糞尿が川や道路に捨てられることもなく、衛生的に一定水準の環境が保持されていたわけです。江戸時代に江戸の人口は百万人の規模で世界一でした。この規模を生活面から支えたのが、玉川上水などの水道と糞尿のリサイクルとも言われるくらい優れたものでした。ただしこのシステムは現代の環境には合わなくなっています。