総合討論  「東日本大震災における下水道の被害と対応」

(1) 濱田講師コメント
 大震災後、早急に復旧・復興計画を立て実行していくことは極めて重要である。スマトラ地震の際にも大津波で甚大な被害が生じ、海岸から5kmセットバックしたところに町造りをする復興計画であったが、住民が住んでいた元の土地に戻り始めたため計画が頓挫してしまった。今回の大震災では、早く復興計画を策定し、後世に誇れる町造りをしたいものである。
(2) 提言1
 4月15日に出された「下水道施設の復旧にあたっての技術的緊急提言」は、リスクとコストの折り合いをつけた実務的なものであり、工学的にも妥当なものと評価している。マスコミなどでは、ややもするとリスクをゼロにするような主張が見られるが、やはり現実的なところで復旧・復興を図るべきである。
 (濱田講師)
 リスクはゼロにできないので、できる限り人命や財産を守るという観点から復旧・復興計画を策定するのが急がれる。
(3) 提言2
 仙台市や宮城県ではBCPが策定されていたので、地震後の対応が比較的スムーズに行き、非常に役立ったと聞いている。下水道新技術推進機構が「下水道BCP策定マニュアル」を平成21年11月に策定しており、災害時により高いレベルで下水道機能を確保していくために活用することが望まれる。 

(4) 質問1
 私は被災地で復旧に携わっているが、その計画作りの中で今回は津波の外力を考慮しなさいとなっているが、具体的なマニュアルもない中で苦慮している。
 (濱田講師)
 現在のところ被害状況の解析や評価が十分でないので、津波対策マニュアルの策定には数年を要すると思われる。今できるのは、今回の津波被害で効果があったと思われる防水扉の設置や受電設備を二階以上に上げる等のことになる。その他にも効果的な対策があれば提言していただきたい。
(5)質問2
雨水対策には超過確率という概念があり、100年あるいは200年に1度の洪水を想定して計画を作っている。津波についても30mとかを想定した対策はとれないのか。
 (濱田講師)
 被害を軽減するために最大限の努力をすべきと思うが、ハード対策だけでなくソフト対策も組み合わせて考えていくべきと思う。それでもリスクはゼロにはならない。
(6) 提言3
 ハードとソフトの両面からの対策をするのは重要であるが、さらに地域の状況はそれぞれ違っており、地域性も考慮してもらいたい。
(7) 質問3
 リスクマネージメントという概念があるが、これについてコメントをいただきたい。
 (濱田講師)
 リスクマネージメントというのは、被害総額に確率を掛けるということのようだが、それで評価できるのかという思いもある。例えば、神戸市では今後500年あるいは1000年地震が起きないのではないかといわれているが、そのような確率を損害予想額に乗じると、コストより小さくなってしまう。被害の総量というのは人命、財産、景観、国力、経済力等様々な面から見る必要がある。
(8) 提言4
 安藤理事長から「下水道被災から学ぶもの」として、復旧対策の基本や被災防止策等の提言を頂いた。

(9) まとめ
 多くの方から貴重な提言や討議を頂き、休憩時間を取れないほど盛況であった。「下水道地震津波対策技術検討委員会」の委員長で在られる濱田先生には適切なコメントを頂き、感謝申し上げる。
 また、義捐金を募集したところ57000円集まったので、まとめて被災地へ義捐金として送りたい。