「瀬戸内海の実態と今後の方策」
                   山口大学 浮田正夫名誉教授

 瀬戸内海の水質と負荷量の状況について説明された。瀬戸内海全体では多少の水質改善の傾向は認められる。

山口県諸沿岸域のCODは1987〜1988年をボトムとして近年漸増の傾向がある。瀬戸内海のTN発生負荷は横ばいであるが、CODとTPの発生負荷は順調に減少している。
 山口県瀬戸内海区の漁業生産量は、1973年をピークに減少傾向にある。ノリの生産量も減っており、本水域の無機態N濃度も1985年以来減少している。また、瀬戸内海全体でも漁業生産量は1985年をピークに減少傾向にあり、とくに貝類の生産量が減っている。




水産業衰退の原因は、栄養不足、乱獲、地球温暖化、環境ホルモン等化学物質、埋立や浅海部開発、ダム・コンクリート護岸・表面被覆、農業形態変化などの複合的要因によると考えられる。特に、アサリの漁獲量が減少した原因としては、干潟底土の細泥化や鉄などのミネラル不足も要因と考えられる。
水産業復活策として、アマモ場の復活や鋳鉄籠に間伐材を入れた漁礁の設置などの取り組みが進められている。
 瀬戸内海の水環境という観点から、以上のようにCOD値の挙動が明解でない点を始めとして、水産業の不調の本当の原因の解明など課題山積の感がある。