■視点21 2009.11.30 水道産業新聞
誤った先入観に支配された事業仕分け
下水道と合併処理浄化槽の性能は対等ではない


■視点21・本文
仕分け第2部が始まった。省益暴走の自公予算88兆円の上に、民主党公約7兆円をオンした95兆円の22年度予算要求は、多くの国民が不真面目と感じており、その意味で仕分けは支持されている。しかし財務省の対象選定、振り付けが報道されるようではダメで、本当に政治主導でなければなるまい。
 仕分けの仕方も、積み上げで10%カットは至難だが、頭から20%カットと決めればできると言われるように、「1年で黒字転換した大阪府にならったらどうか」、という一般論はさておき、真面目な減額要求の国交省が、不真面目な各省と等しく仕分けされるのは不公平である。地方固有財源の交付税を仕分けるようでは、「地方主権」の看板が泣く。
 さて、わが下水道が事業仕分けの対象となり、「実施は各自治体の判断に任せる」というWGの評価が下された。権限と財源を地方に移譲するといっても、下水道はもともと市町村が事業主体であり、建設国債を財源とする国庫補助金に、委譲すべき下水道特定財源の現金はない。どう変わるのか見当もつかないが、政務官が記者会見で言われたように、補助金の問題は全省庁にまたがる問題であり、一事業部だけの問題ではない。目前のことに一喜一憂せず、大きな流れを見ていくしかないと思われる。
 また、「三位一体の改革」で「数百万円の税源移譲と引き換えに何億も交付税を減らされた」、というのが市町村の実感であり「本省権限の整備局等への移譲でかえって変更手続きが面倒になった、都道府県への移譲なら市町村負担は変わらない」という不満も強い。「移譲」には拒否反応があり「誰に移譲するのか見ないと論評できない」というのが首長たちの多くの意見ではないだろうか。
 仕分け人は下水道・排水処理に詳しい方々か分からないが、日本下水道事業団がどこかの独法みたいに補助金配分に介在しているという事実誤認をされたた方が、法律を確認されて見解を改められたように、正しい情報が得られれば常識的な判断を下される方々と思われる。
 それだけに議論が、「市町村が自由に使える金があれば同じ性能で安上がりの浄化槽にシフトするはず」「補助金があるからこれに釣られて下水道を造るのだ」という、市町村長を馬鹿にしたような先入観に支配されていたことは残念である。
 下水道法と浄化槽法の規制の違い、一昔前のBOD20ppmで「性能が対等」という誤解を正し、浄化槽管理の実態や正常に管理すればそれなりにコストがかかる実態を説明し、浄化槽の更新費用を無視し、現状の管理を前提にしたコスト比較を正す努力が必要と思われる。不十分な管理を前提のコスト比較の横行を許してきたことは、下水道関係者全ての責任でもある。
 組み換え予算要求の考え方では、普及率が低く整備途上の地域については、「他の汚水処理施設を含めた地方公共団体の整備計画の見直し状況を踏まえ、縮減する」となっている。国がナショナルミニマムの旗を降ろすはずはなく、信頼して見守るべきであるが、現場では今までの計画、今までの手法で整備を続ければ、事業費が減っただけ進捗が遅れ、供用前に元金償還が始まる。将来の接続に困難が増すなど経営が苦しくなる。
 しかし、人口減少のもとで、現に今、人が住んでいない地域は「市街化区域」も外して管渠が要らない浄化槽に思い切ったシフトを行う。計画を絞り込んだ結果、下水道で整備することになった地域については補助対象率拡大の成果を活かし、また社会実験の全国普及策や、入札・契約差益の活用などにより低価格化を図るべきではないか。事業費は減っても事業量は落とさないと腹を決めれば、禍転じて福となるかもしれない。それだけに、事業認可当局は右肩上がり時代の計画に固執し、柔軟な戦線整理を妨げることがあってはならない。この面での市町村移譲を先行すれば皆が喜ぶだろう。      (投稿)