NPO 21世紀水倶楽部 ディスポーザー分科会   第3回研究会
「直投型ディスポーザーを考慮した下水道システ
〜 普及を進める上での課題や対応策を考える 〜

2008年5月14日(水) 13:30〜17:30,財団法人下水道新技術推進機構 8F会議室

 近年では,直投型ディスポーザーの設置を承認し,条例等において直投型ディスポーザーの届出などの扱いを定める自治体も増えつつあります。しかしながら,比較的簡単に個人でも設置できる製品であることや制度への認識不足等による未届け設置の問題や,便乗個別販売など悪質業者の問題など,実務上の課題が発生しています。また,ディスポーザーのメリットである住居環境の改善(悪臭や害虫等の被害解消)や,バイオマス活用などは,一定以上の普及が前提ですが,普及が遅いとメリットも得られにくい状況にあります。
 このような状況のなか,今回のセミナーでは,直投型ディスポーザーの普及を前提とした社会システムの提案や課題と対応策をテーマに,これらの事業に直接関係する方々にご講演いただき,皆様との意見交換を行いました。


開催日時:平成20年5月14日(水) 13:30〜17:30
開催場所:財団法人下水道新技術推進機構 8F会議室
主催   :特定非営利活動法人「21世紀水倶楽部」ディスポーザー分科会
参加人員:56名(他に講師等14名)
プログラム:建設コンサルタンツ協会CPDプログラム登録(JCCA200804180002)





   《式次第》
開会あいさつ
  NPO法人21世紀水倶楽部監事,ディスポーザー分科会長 奥井英夫
講演
 T『ディスポーザーに関する社会実験の結果と 環境・エネルギー問題に対する下水道の可能性
    藤木 修(国土交通省 国土技術政策総合研究所 下水道研究部長)
 U『群馬県伊勢崎市におけるディスポーザー設置の取り組みについて
   渕上 俊次(伊勢崎市 環境部長)
 V『直投型ディスポーザーを前提とした社会システム
   矢野 明司(NPO会員,Unuma環境技術研究所)
 W『ディスポーザー設備の機能確保と購入時の留意点
   野中 豊(NPO会員,セコムテクノサービス(株)営業部長)
全体討議
  司会:栗原秀人 (NPO理事,下水道新技術推進機構下水道新技術研究所長)

司会進行:清水洽(NPO理事,ディスポーザー分科会)

報告資料『DSP第3回研究会pdf





《 開会の挨拶 》
NPO法人21世紀水倶楽部監事,ディスポーザー分科会会長 奥井英夫


 平成17年7月に国交省からディスポーザー導入に関する基本的な考え方が示され2年半が経過しました。その間,当倶楽部のディスポーザー分科会は,東京,北海道そして今回と3回のセミナーを開催している。今日は,行政関係者,メーカー,販売会社,コンサルタント等50数名の方々に参加を頂いています。分科会では,ディスポーザー設置の推進方策を検討しています。メーカー,コンサルタントの方々にも分科会に加盟していただき,情報を共有し普及促進に関わって頂きたいものと期待しています。





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講演T 《 ディスポ−ザ−に関する社会実験の結果と環境・エネルギー問題に関する下水道の可能性 》
国土技術政策総合研究所 下水道部長 藤木 修

《平成12年度から北海道歌登町で行った社会実験の結果と環境・エネルギー問題に関する下水道の可能性について説明があった。》

 北海道歌登町で行った国総研の社会実験を踏まえて次のように述べた。各戸の水道使用量に殆ど増加は認められなかった。SS,BODは湿潤100g厨芥量あたり10g前後であり,汚濁負荷量はSS,BODともに2〜3割増加する。下水道管,屋外排水設備及び桝では閉塞はなかった。S字トラップでは閉塞が発生した。その他の排水設備では屈曲部,下水道管では逆勾配の所に堆積があった。下水道管での掃流実験では流速が0.6m/s以上であれば十分に掃流出ることが解った。下水処理場では流入水量の増加,水質は流入,処理水ともに大きな変化は認められなかった。汚泥搬出量は若干増加した。
 国総研の立場で判断すると分流式下水道ではディスポーザーを使用することにより管きょ,処理場に及ぼす影響は殆どないと言える。
 さらに国では(独)土木研究所を中心にバイオマスに関する研究の一環として藻類を利用したバイオ燃料の生産に取り組んでいる。藻類の生育には水と栄養塩類が必要であり,下水処理水は藻類の生育環境としては有望であろう。
(編集者見解:この観点からしてもディスポーザーの普及促進は望ましいことである。)





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講演U 《 伊勢崎市におけるディスポーザー設置の取り組みについて 》
伊勢崎市環境部長 渕上 俊次

《伊勢崎市中心部の中心市街地活性化基本計画区域において,社会実験などを通じてディスポーザー設置を進める市の取り組みについて説明があった。》

 群馬県伊勢崎市の公共下水道は分流式であり,当市の中心部のうち東西1.2km南北1.3kmの156ha,戸数にして3,900戸,人口約9,000人の地区を社会実験区域としてディスポーザー設置を推進することにした。当市の下水処理場は処理能力に余裕があり,標準活性汚泥法,汚泥消化槽,ガス発電設備を有している。
 ディスポーザーを一般家庭に普及・促進は,人を呼び戻すため市街地の住環境を改善することと高齢化対策,焼却ごみ減量への貢献策として実施するものである。また,下水道,ごみ行政にもそれぞれ次のような状況が合った。下水道管理者としての立場からは水処理施設に余裕もあり,汚泥増加に対しても十分に対処が可能であり何等問題はなかった。ごみを担当する部局としては市町村合併とダイオキシン問題で既設の3焼却炉はフル稼働状態であり焼却ごみの減量化が喫緊の課題であった。
 ディスポーザーの普及・促進のため,ごみの減量化対策として生ごみ処理機での補助として,2万円を限度として平成20年1月より助成することとしている。社会実験に踏み切るに際しては,市当時の下水道部門の職員や市民団体等からの反対意見があったが,心配の種をひとつひとつ説得に努めた。市長の強力なバックアップもあり,市としても広報紙などを通じて市民の理解がより一層えられるよう取り組んでいきたい。





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講演V 《 直投型ディスポーザーを前提とした社会システム 》
矢野 明司(NPO会員,Unuma環境技術研究所)

《平成14年に,福知山市夜久野町の農業集落排水処理施設の1つ上夜久野処理施設で行われたディスポーザーを設置した実証実験について説明があった。》

 京都府Y町には7カ所の農業集落排水処理施設があり,現時点ではほぼ水洗化を実現している。余剰汚泥はすべて「処理区内における個別完結型方式」でコンポスト肥料として地区住民が引き取っている。ディスポーザーの設置し,実験を実施した地区の概要は計画処理人口1,570人,接続率83%,接続戸数334戸,ディスポーザー設置戸数200戸,計画処理水量424m3/日,現在の流入水量300m3/日,処理方式は回分式活性汚泥法,管きょ延長18km,中継ポンプ場22カ所である。
 実験の結果としては処理施設への流入水量は日平均で約6.5%増加した。全戸接続の場合には約10%の増加が予想される。管きょ,中継ポンプ場,処理場の維持管理上問題は生じなかった。流入水質はBOD負荷が約45%増加した。処理水質は良好でBOD,SSともに除去率95%以上であった。流入水のn-Hex濃度は1.7〜12.0mg/lと低い値で推移している。廃油を下水へ流さないよう住民を指導した結果である。ディスポーザーの未設置家屋が多い地区では住民説明会を行わなかったのでポンプ槽にオイルボールの発生が顕著であった。余剰汚泥の発生量は変動要因が多く正確には把握できてないが,10〜30%程度増加しているだろう。調査期間中に野焼きが禁止されたこともあり,正確な評価は出来ないが,可燃ごみとしての収集量は約25%減少した。なお,出席者の質問に答えて次のような補足説明があった。
 Y町はその後町村合併によりF市となったが旧Y町は特区としてディスポーザーの設置が認められている。調査時には機器代金として5万円の住民負担を求めた。現在,特区の560世帯の半数でディスポーザーが設置されている。機器の設置費としては6〜7万円ぐらいが負担の限度だと考えている。5万円だと爆発的に普及するだろう。また,ディスポーザーを解禁することにより下水道接続率が増えるという効果もあった。





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講演W 《 ディスポーザー設備の機能確保と購入時の留意点 》
野中 豊(NPO会員,セコムテクノサービス(株)営業部長)

《DSP設備の機能保持の考え方,購入時の留意点および機器単価を押し上げる要因の3項目について説明があった。》

DSPの機能確保
安全性の確保,粗悪品の排除が前提で,本体の基準作り,十分な取り扱い説明と工事での配慮が必要である。ディスポーザー(DSP)の機器性能は,マンションディベロッパーやゼネコンの厳しい要求で改善されてきた。推奨機器はDSP排水処理システムの評価機関により評価認定された機器が良い。DSPの安全性にはPSEマークが取得されていることが重要である。ユーザーの使い方がトラブルの原因となることが多いので取り扱い説明の徹底が特に重要である。設置工事では,機器設置工事,排水管接続工事,電気工事について留意する必要がある。
DSP機器購入時に住民が留意する点
DSP本体の故障はまれであるが使い方によって配管の詰りや回転歯の障害等のトラブルが生じるので,販売元のサポート体制と内容の確認および機器の保障期間と内容の確認が必要である。
官公庁への機器設置届けと申請代行者の確認,助成金も含めた料金体系の確認等が必要となる。特に行政窓口への問い合わせやクレーム回避の面から販売元のサポート体制の確認が重要。
DSP機器単価を押し上げる要因
メーカーは,安全性,利便性,材質,機能性等について常に販売責任を問われておりブランド維持のため製品品質の維持向上に特段に注力している。現状では大量製造によるコスト低下が期待できない。一方,ユーザーからの過剰なサービス要求に対応する必要もある。
今後,市民生活の利便性,快適性,ごみ処理労力の軽減等に寄与するため,下水道の整備状況,処理能力要因等を考慮しながら直接投入型DSPの普及促進について検討して行きたい。





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《 総合討議 》
【討議司会:栗原秀人(NPO理事,下水道新技術推進機構下水道新技術研究所長)】

論点1 ディスポーザー導入に向けて
導入の背景と目的・効果(利便,快適,環境,高齢化,行政の効率化等々),地域としての最適解,合意形成(賛成と反対),関係部局の連携,各施設の費用と負担,排出者と受益者(責務と役割分担),義務と助成の仕組み(条例・要綱等)
論点2 ディスポーザーの設置・使用・管理
性能,トラブル,安全,適正利用,条例・基準,企業等の役割と責務(販売・設置・アフターケアー等)

【まとめ(総括)】
止まっていてはダメ。進むなら進む,後ろに向いて走るなら後ろを向いて走る「皆で動こう!」また,結論ありきではなく,皆が集まってメリット・デメリットを議論しあうことが重要ではないかと思う。
「皆で前に一歩進む!」を今日の結論として総合討論を締めたい。





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